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検察庁法改正の原点、黒川検事長定年延長の問題点

海渡雄一|2020年5月11日3:05PM

検事の定年延長は違法

検察庁法の22条は、検事総長は65歳、他の検事は63歳の誕生日に退官することを定めている。

森法相は1月31日午前の閣議後の会見で、黒川氏について「検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、引き続き勤務させることを決定した」と述べた。その法的な根拠は国家公務員法81条の3で、「その職員の職務(略)の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずる」場合にあたり、定年を延長したと説明した。

国家公務員にはもともと定年制度がなく、1985年に定年制が導入された。国家公務員法の定年制度は、他の「法律に別段の定めのある場合を除き」適用できると定められている(同法81条の2)。

この「別段の定め」の一つが検察庁法22条だ。検察官の定年は、誕生日に定年になり退官すると定めている。国家公務員法では「定年に達した日以後における最初の3月31日に」退職するとしている。

両者は全く違う制度なのである。検察官の定年については「検察庁法22条」だけが適用され、国家公務員法の定年の定めは適用されず、国家公務員法によって任期を延長することは明らかに違法である。

この法理は、元検察官である郷原信郎弁護士が指摘し、日本労働弁護団の常任幹事を務める渡辺輝人弁護士が、政府の有権解釈をまとめたと考えられる『逐条国家公務員法』にこれを裏付ける記載を発見した。この本には、「一般職の国家公務員については、原則的には本法に定める定年制度が適用されるが、従来から他の法律により定年制度が定められているものについては、その経緯等に鑑み、それぞれの法律による定年制度を適用しようとするものである。このようなものとしては、検察庁法第二二条による検事総長(六五歳)及び検察官(六三歳)の定年、(略)がある」とされている(692ページ)。

衆議院予算委員会で国民民主党渡辺周議員の質問に対して森法相は「検察官は、一般職の国家公務員であり、国家公務員法の勤務延長に関する規定が適用され」るという解釈を示した。

しかし、このような解釈が成り立たないことはこの逐条解説から明らかだ。

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