水俣病・福岡高裁“史上最悪判決”に憤る原告ら
「命ある限り闘う」
岡田幹治|2020年5月18日4:59PM
【過去の最高裁判決を無視】
判決に対し原告・弁護団・支援者から憤りの声が噴出した。
「被告側の主張を丸呑みし、水俣病患者を診たことのない神経内科医の意見書や証言を採用した不当なもの」「他の病気の可能性があれば水俣病でないというが、どんな症状があれば水俣病なのかについては答えていない」「原告が水俣病であることを否定するための材料と理屈を都合よく並べ、水俣病を終わらせようとしている国の姿勢に加担している」
水俣病で国(環境省)は1977年に「複数の典型症状が必要」という厳しい認定基準を定め、多数の被害者を切り捨ててきた。これに患者側が訴訟で抵抗し、司法が患者認定の門を広げてきた。水俣病の発生と拡大を防ぐことができなかった国と熊本県に賠償責任を認めた2004年の最高裁判決と、「一つの症状でも水俣病と認定する余地はある」とした13年の最高裁判決が代表例だ。
今回の福岡高裁判決はこうした裁判の積み上げを無視した内容であり、「水俣病裁判史上最悪の判決」といえる。
不当な判決を糾弾する集会は東京(3月17日)と水俣市(同28日)で開かれた。東京集会には原告の緒方博文さんが駆けつけ「こんな判決を出した裁判長は鬼畜のような人だ。命ある限り闘う」と決意を表明し、原告代理人の山口紀洋弁護士は「判決は科学も論理もない異常なものであり、上告審で逆転勝訴する余地は十分にある」などと語った。
(岡田幹治・ジャーナリスト、2020年4月17日号)