『産経』記事に誤報の疑い
「岩手でマスク売れ残る」?
崎山勝功|2020年5月19日12:32PM
新型コロナウイルス感染拡大が続く中で、全国唯一感染者の報告がない(4月20日時点)岩手県でのマスク販売状況を報じた『産経新聞』記事に、県内外から「事実と異なる」と強い批判が上がっている。筆者の取材では同紙記事と異なる証言が複数集まり、同紙の誤報の疑いが濃い。
問題の記事は「産経ニュース」4月12日配信「マスク売れ残るスーパー/『普段通りの春』感染者ゼロの岩手」(後日「岩手、感染者ゼロも高齢世帯多く/関係者動向注視」に見出し変更)。記事では県内のスーパーの男性社員の談話に基づき「新幹線の駅近くや幹線道路の国道4号沿いにある店舗ではマスクがすぐに売り切れてしまうが、それ以外の店舗では1日ではけないこともしばしばあるという」(原文ママ)と記載した。
筆者の電話取材に、大手薬局チェーン「薬王堂」(岩手県矢巾町)本社のバイヤーは「(マスクの)販売状況は、少なくとも週1回確保した在庫を(店舗に)配送している。確保できれば週2回配送ということもある。入荷すればすぐなくなってしまう。全国と同じで売れ残りはまずない」と証言した。
複数のスーパー本部に電話取材しても「稀に入荷してもすぐ売り切れ。売り場には常時ない。売っている所があったら教えてほしい」(いわて生協、同県滝沢市)、「マスクは入ってもすぐになくなってしまう。元々入荷してこない」(マルイチ、同県盛岡市)、「入荷の状況が思わしくない。(店頭で)売れ残っているという話は聞いていない」(ユニバース、青森県八戸市)との回答だった。
同紙記事配信前の4月3日付『岩手日報』が「消えたマスク、どこへ/品薄解消めど立たず」と報道。同様の記事は複数の全国紙・地元テレビ局も報道している。
産経新聞広報部は書面での質問に対し「編集に関することにはお答えしておりません」と回答した。
(崎山勝功・元『常陽新聞』記者、2020年4月24日号)