官民一体でウイルスと闘う民主主義の優等生--新型コロナ台湾の対応
栖来ひかり|2020年5月19日10:36AM
検査数3万3733件、陽性339件、死亡5件、隔離解除50件(4月3日現在)。じわじわと増加してはいるものの、多少の不便はあっても子どもたちは普通に学校へと通ってくれ、美術館や博物館も開いていて暮らし自体は通常運転。感染が最初に拡がった中国と近く往来も多い台湾で、これほど安心して過ごせてきたのは、ありがたいというほかない。
「先手防疫」とも呼べるスピード感をもって対策が次々と講じられてきたおかげだが、少々強引と思える施策でも国民が協力的なのは、政府が想像力を駆使して不安に寄り添ってくれている信頼感の賜物だろう。
台湾政府が早期から神経を張りつめ水際対策を進めてきたのは二つの訳がある。まずは2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の悪夢を繰り返すまいとの思いだ。「一つの中国」原則下でWHO(世界保健機関)に加盟することのできない台湾は、自力でマスク生産やワクチン開発ができるよう十年一剣を磨いてきた。
いまひとつは有権者ファーストの緊張感である。現蔡英文(ツァイインウェン)政権は2018年の統一地方選挙で大敗した苦い経験から、ちょっとでも手を抜けば世論によって政権を追われる危機意識を持って全力で事に当たっている。民主化以降に初めて行なわれた直接総統選挙(1996年)より3度の政権交代が成立した台湾では、民主主義のチェック機能が理想的な形で働いているようにみえる。