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医療費と病床削減が招いた感染爆発に疲弊する医療現場ーー新型コロナ、イタリアの対応

佐藤直子|2020年5月24日11:00AM

見本市施設に設営中の病院。3月29日、ロンバルディア州ベルガモで。(イタリア紙『ラ・レプブリカ』webより)

「私たちは前線の兵士。絶え間ない恐怖の中にいます」と訴える看護師の目の周りは長時間つけたゴーグルの痕で腫れていた。3月半ば、イタリアの看護師連盟が公開した映像は衝撃的だった。医療用手袋やマスクも不足。眠る間もない看護師たちは「私たちは見捨てられている」と悲鳴を上げていた。

イタリアでは2月下旬に北部のロンバルディア州で初の新型コロナウイルスの国内感染者が確認されてから、瞬く間に感染者が増加。イタリア紙『ラ・レプブリカ』によれば、人工呼吸器のついた集中治療用のベッドは満杯になり、蘇生措置は生存可能性の高い患者を優先しているという。医師や看護師も感染して落命している。遺体を入れた棺を軍のトラックが火葬場に運んでいく。医療現場はまさに「戦場」となった。

死者数が世界最多の1万6000人超となったイタリア(4月7日現在)。高齢化率は23%を超え、世界では日本に次ぎ高い。かつて高水準だった同国の医療は、2007年以降の世界金融危機で一変。財政難で医療費削減が進められ、病院の統廃合が行なわれた結果、国民1000人あたりの病床数は2000年の4・2から17年は3・2に減少。急性期の病床も減り、医師は好待遇の民間病院や海外に流出した。

感染者が集中したイタリア北部は医療体制が整った裕福な土地柄だが、それでも約ひと月で対応能力を超えてしまった。

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