医療費と病床削減が招いた感染爆発に疲弊する医療現場ーー新型コロナ、イタリアの対応
佐藤直子|2020年5月24日11:00AM
政府は3月10日から全土で外出禁止令を出し、飲食店の営業も停止した。市民はパン屋やスーパー、薬局など生活必需品を買うときだけ外出許可証を持って外出する。21日には生活に直結しない製品の生産も停止とした。
強制力を伴う外出禁止は人権制限にもつながるが、市民はどう受けとめているのか。ロンバルディア州ベルガモ郊外に住む70代のエリアさん、ディナさん夫妻は「身を守るには家から出ないようにするしかない」と指示を受け入れ、毎日祈る思いで過ごしている。
同州の州都、ミラノに住む医療通訳者の女性(53歳)は「店頭に並ぶときにもほかの人と5メートルは離れている」と話す。欧州では伝染病ペストの悪夢が刻まれており、新型コロナウイルスはその闘いを思い出させるのだという。
中部ウンブリア州のパッシニャーノに住むレストラン調理師のロヘイオさん(55歳)は休業で収入がとだえ「どう暮らせばいいのか」と途方に暮れる。
2000年代の財政危機以降、格差は深刻で若者は非正規や失業が多い。「政府は家賃や生活の保障をどうするのか。放置したら自殺者も出る」と政府発表やニュースに目をこらす。
病院や医師不足に対応するため政府は医学部最終学年生の国家試験を免除して現場に入れるようにし、ベルガモでは陸軍の山岳部隊が見本市施設に病院を設営。4月2日に稼働した。140床を備え、ロシア人医師の協力も得て集中治療を行なうほか、入院の必要のない軽度の患者を診るという。