10万円給付金、生活保護利用者は収入認定から除外
斉藤円華|2020年5月26日3:35PM
全国すべての人を対象に国が給付する一律10万円の「特別定額給付金(仮称)」をめぐり、厚生労働省は生活保護利用者の収入とはしない取り扱いを決めた。これにより生活保護利用者も給付を受け取れるが、生活困窮支援の専門家は「確実に給付が届くよう環境整備が必要」と指摘する。
国は4月20日、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策を閣議決定。給付金について「感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う」とした。これを受けて厚労省は同22日、各都道府県等の担当課に事務連絡。給付金の趣旨と目的にかんがみ、生活保護利用者の収入とはしない方針を通知した。
生活保護制度は、利用者に毎月支給される保護費とは別に収入がある場合、福祉事務所に申告するよう定める。認定された収入額は保護費から差し引かれるため、実質的に給付金を受け取れないおそれがあった。厚労省の担当者は「(給付金は)全国すべての人が対象。収入認定から除外することが給付金の趣旨に沿う」と説明する。
「生活保護問題対策全国会議」事務局長の小久保哲郎弁護士は「2013年以来の生活保護基準引き下げで利用者は困窮しており、『今度の給付も収入認定されるのでは』と不安も抱いている」と指摘。同18日・19日に全国一斉で実施された生活支援の電話相談(同実行委主催)でも「約5000件の相談の4分の1が生活保護利用者からだった」(小久保氏)という。
その上で、確実な給付のために「福祉事務所の事務手続きを簡素化する点でも、給付金を一括して収入認定除外する『特別の処理基準』を設けるべき」と話す。また、NPO法人ほっとプラスの藤田孝典理事も「感染拡大が長期化すれば継続的な給付が必要だ。今回の給付を成功事例とするために、国は弱者・困窮者支援の現場と意思疎通を深めてほしい」と語った。
(斉藤円華・編集部、2020年5月1日・5月8日合併号)