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新型コロナ対策、二兎追う者は一兎をも得ず
高橋伸彰|2020年5月26日9:55AM
これに対し、歴代政権の中で史上最長の在任期間を更新中の安倍晋三首相は、自民党総裁4選の欲さえかかなければ、支持者に媚びたり、霞ヶ関官僚の前例主義に縛られたりすることなく、専門家の知見にしたがって決断できる。5月6日が期限の緊急事態宣言は延長の方向で検討されているようだが、その先も予防や治療の体制が整備されるまでは、いわゆる「三密」を引き起こす活動は制限するのが望ましい。
それと同時に、生活に苦しむ個人や経営難に陥った企業に対しては、政府が率先して支援の手を差し伸べ、安全と安心が確信できる日までは、人びとが経済的にも、身体的にも、精神的にも耐えられるように万全を期すべきである。
求められているのはデフレ脱却でも、基礎的財政収支の均衡でもない。狙う的を経済再生から感染抑制に替えて、外出自粛、休業要請、経済支援の3本の矢を「治療薬が開発されるか集団免疫ができるまで」射ることだ。
習近平国家主席の訪日や、オリンピック開催に固執して初動対応が遅れたことを反省するなら、経済の回復や再生は感染抑制を達成した後の話だ。二兎追う者は一兎をも得ないのである。
(高橋伸彰・立命館大学名誉教授。2020年5月1・8日合併号)