別役実さんのこと
小室等|2020年6月2日12:04PM
別役実さんが三月三日に亡くなられた。八二歳だった。日本の不条理演劇を確立した、日本の演劇史に残る劇作家だが、フォークファンにとっては「雨が空から降れば」の作詞者と言うほうが通りがいいかもしれない。
「雨が空から〜」は別役実作『スパイものがたり』の劇中歌として生まれた。一九七〇年のことだ。
東京・アートシアター新宿文化で映画の最終回上映後、たしか一〇時近くから始まる芝居だった。作曲の依頼が演劇に素人の僕にくるなんて、時代がフォークに傾いていたんだと思う。芝居の何たるかも知らず、必死に劇中歌二七曲を作り、楽団六文銭なる座付きバンドを編成、生演奏の上演だった。
僕はここで、青山学院大学演劇部から駆り出されてきた五歳年下の及川恒平に出会う。座付きバンドに入ってもらい、劇中歌「雨が空から〜」は恒平によって創唱され、恒平はそのまま六文銭に加入し今に至る。
この歌は六文銭も小室も持ち歌として歌い続けてきているし、吉田拓郎、井上陽水、かぐや姫、森山良子、矢野顕子、松山千春(小室は大嫌い、だけど作品は認めると言って歌っていたらしい)ほかたくさんのアーティストが歌ってくれているので、そこそこ人に知られている、ということはフォークファンにも別役さんは知られているということになる。