別役実さんのこと
小室等|2020年6月2日12:04PM
余談だが、六文銭初期の別役ソング「街と飛行船」「ゲンシバクダンの歌」「カッパライの歌」の三曲は立て続けに発売禁止になっている。映倫と同じくレコードにもレコ倫があり、一方的に通告される。理由を問い合わせた。
歌詞がまずいらしい。「街と〜」の、まま子、みなし児、リウマチ、小児マヒが駄目。「ゲンシ〜」は、ポケットに入れたゲンシバクダンが新宿・紀伊國屋と池袋・西武デパートのあたりで爆発し、その二つが吹っ飛ぶのだが、レコ倫の言い分は、みだりに公共物を破壊してはならない由とのこと。「カッパライ〜」にいたっては、カッパライを助長してはならないということらしい。笑い話にもならない。
九七年、別役さんは『雨が空から降れば』という、曲と同名の芝居を文学座に書き下ろした。二〇一六年、劇団Pカンパニーが再演。その際、新たに劇中歌が二曲追加され、僕が作曲した。私事だが、別役さんとの歌作りは「雨が空から降れば」で始まり、「雨が空から降れば」で終わったことになる。
別役さんは新作を予定していたと聞く。コロナ報道で別役さんの訃報が埋没してしまったが、重要な演劇人を一人失ったのだということは明記しておきたい。
(小室等・シンガーソングライター、2020年5月15日号)