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PCR検査「1日2万件体制達成」に疑問の声 
足りない採取用綿棒

世古一穂|2020年6月10日5:38PM

PCR検査用綿棒。左の容器(保存液入り)とのセットで使用。(撮影/検査現場の臨床検査技師)

新型コロナウイルスの感染有無を調べるPCR検査について厚生労働省は5月15日、国内における1日あたりの実施可能数が約2万2000件と発表した。安倍晋三首相が4月6日、その時点で1日あたり約1万2800件とされていた実施可能数をほぼ2倍にあたる1日2万件まで拡充するとした目標が数字の上では達成された。

だが、この「目標1日2万件」には人員のほか防護服や医療用マスクなどの不足を指摘する声が当初からあり、現在も有効性を疑問視する声が現場から上がっている。最大のネックがPCR検査用「鼻咽頭ぬぐい用綿棒」の不足。実際にPCR検査を行なう某大学病院の検査室で働く40代の臨床検査技師は次のように説明する。

「検査では1検査につき1本の綿棒が必要。全国で1日2万件の検査を行なうには月に約60万本必要ですが、業者によればPCR検査用綿棒と容器のセット(主にイタリア製)は輸入しており、日本では生産していないと思われます」

同じく大学病院で働く50代のベテラン臨床検査技師も「PCR検査が保険医療報酬になかなか認められないような状況では病院内に技術や機器が定着するわけもない」と普及に懐疑的。むしろコロナウイルスの検査も早期にインフルエンザと同様の抗原検査に移行させ、町の医院で行なえるようにすべきだと説く。

厚労省の専門委員会も先にPCR検査が日本で拡充されなかった理由に、保健所の業務過多や機材のほか「民間検査会社などに検体を運ぶための特殊な輸送機材」の不足などを挙げた。だが「綿棒」という検体採取に不可欠なものすら自給できない日本の状況まで、同委員会では把握していたのか?

コロナ対策のみならず、従来の社会の歪みを是正し、生命に関わるものは最低限自給できる社会の構築へ地域や企業が向かう好機として今を捉えるべきではないか。

(世古一穂・元金沢大学大学院教授、2020年5月22日号)

 

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