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佐賀新聞社の「押し紙」実態を裁判所が断罪
宮下正昭|2020年6月15日5:02PM
【テレビが報じた!】
今回の判決は同日夕方、NHK佐賀放送局と県内唯一の地上波民放テレビ・サガテレビが報じた。ローカルとは言えテレビ局が押し紙問題を報じるのは珍しい。原告弁護団長の江上武幸弁護士も「驚いた」という。押し紙問題は世に問うべき課題で本来、報道する価値はある。しかし旧来のメディアは正面から向き合おうとしない。
ところが今回サガテレビは原告の寺﨑さんにインタビューも行ない、2分弱のニュースにまとめた。佐賀新聞社は同社にとって4番手の株主だが、記者がそれを意識することはなかったようだ。純粋にニュース性を感じたということらしい。NHK佐賀の報道は県内ニュース番組で1分40秒余り。全国枠では放送されなかったが「NHKオンライン」にアップされた。
押し紙訴訟は和解で終わることが多い。和解では中身を口外しない条件が付くのが一般的であり、外からは内容がわからないために報道しづらい。今回は判決が出て、その内容も押し紙を端的に批判していたためわかりやすかった。
一方、肝心の新聞で報じたのは『西日本新聞』だけだった。翌日の朝刊第3社会面に1段見出しで報じられた。裁判所には複数の全国紙の記者も来ていたらしいが、掲載された形跡はない。当の『佐賀新聞』も報じていない。
コロナ禍で、ネット上では真偽不明の情報が飛び交う。こういう時こそ旧来のメディアの存在は大きい。新聞は紙という確かな媒体だ。日々部数が減っている今こそ、新聞社と販売店が真の「車の両輪」となり部数維持を目指すべきだ。原告の元販売店主・寺﨑さんは「販売店のほうのタイヤはすり減ったらすぐ交換させられる。このままでは新聞は生き残れない」と警鐘を鳴らす。
(宮下正昭・鹿児島大学准教授、2020年5月29日号)