コロナ禍の雇い止めで学童保育指導員らが地位確認求め提訴
大阪府守口市
平野次郎|2020年6月16日11:16AM
【民間委託の弊害が露呈】
守口市の学童保育は公設公営で50年超の歴史がある。指導員が専門知識と経験を積み重ね、保護者と一緒に保育内容や行事を充実させるなど、他府県からの見学者も多かった。ところが16年、西端勝樹市長(大阪維新の会)が掲げた「改革ビジョン」に学童保育の民間委託が盛り込まれた。委託による保育の質低下や指導員の労働条件悪化に危機感をもった指導員の労組や保護者の会などが民間委託反対の運動を展開し、4万筆を超える反対署名を集めて請願書を出したが、市議会で不採択になった。
市は17年9月、民間委託について保護者説明会を開き、パブリックコメントで市民の意見を募った。その中で市は「公設民営であり、市が責任をもって事業をすることに変わりなく、委託後もチェックシートをもとに巡回し、場合によっては指導する」と回答している。18年8月、市はプロポーザル(公募型企画競争方式)で選定した共立メンテナンスと受託期間5年の業務委託契約を結んだ。
全国学童保育連絡協議会が昨年5月に実施した調査によると、学童保育の民営化が進む中で民間企業の進出が目立っている。全国の学童保育2万3720カ所の運営主体をみると、公立公営が32・2%で、民間企業への委託は7・5%、あとは地域の運営委員会や社会福祉協議会、学校法人などへの委託。前年度比では、民間企業が26・8%と急増しているが、他は微増か微減となっている。
原告らは提訴前、大阪地裁前で集会を開催。原告や保護者、支援労組などの代表が「学童保育は保護者や指導員、市民らにより守られてきた地域の宝」「不当労働行為を繰り返すブラック企業は保育の場にはふさわしくない」「市の民間委託にも問題。事業実施者としての責任は重大だ」と訴えた。
(平野次郎・フリーライター、2020年5月29日号)