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ポストコロナ、企業の内部留保を有効活用せよ
2020年6月20日2:47PM
一方で、企業部門の資金過剰はとても大きい。内部留保をむやみと積み上げているからである。
要するに、今日の日本においては、政府部門の金欠状態を、家計と企業の余りガネで賄ってあげているのである。こんなに奇妙な話はない。
政府部門というものは、本来、民間部門を助けるために存在するはずだ。金欠を始め、民間部門が窮地に陥った時に助け船を出す。その役割を果たすのが、政府部門であるはずだ。
ところが、今の日本においては、民間部門が政府部門に対する資金的レスキュー隊を演じているのである。これは、いかにもおかしい。
企業は銀行ではない。内部留保を溜め込み、余剰資金を政府に貸してばかりいるのでは、まともな形で経済活動に貢献しているとは言えない。節約指向の企業部門がまともな賃金を払わず、金利もないに等しいから、家計部門の貯蓄はどんどん細っていく。
それでも、政府部門の資金不足は穴埋めされなければならない。だから、細りゆく家計の余剰資金も、巡り巡って結局は政府部門に吸収されていく。
ポスト・コロナの日本において、果たして、この異様な資金循環構図の正常化が進むだろうか。
そのためには、今こそ、企業が雇用維持と賃金水準維持のために内部留保を有効活用すべきだろう。それを機に、まともな資金循環が動き出すことを期待したい。
(浜矩子・エコノミスト。2020年5月29日号)