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海自輸送艦「おおすみ」衝突事故、国の主張揺るがす証拠発覚
三宅勝久|2020年7月21日11:34AM
事故の真相は輸送艦の「あおり航行」ではなかったか――。2人の死者を出した海上自衛隊輸送艦「おおすみ」(8900トン)と釣り舟「とびうお」(5トン未満)の衝突事故(2014年1月15日、広島県沖の瀬戸内海で発生)から6年あまり。自衛隊を免罪した政府や海自の調査結果を揺るがす証拠が発覚した。
海上保安庁の捜査記録に綴られていた「おおすみ」艦橋の会話記録が、遺族が起こした国家賠償請求訴訟の中で検察庁から開示された。そこに衝突3~4分前のものとして、こんなやりとりがある。
〈左通ったほうがいいでしょ〉
〈動静見ながら…〉
南南西に向け航行していた「とびうお」の後方から「おおすみ」は真南の進路で追いかけていた。この状況で「左通ったほうがいいでしょ」とは、常識的に見れば「とびうお」を先に行かせたほうがいいとの助言である。危険を感じたからだろう。つまり追い越して右側に出ようとしていた証拠である。そして、この助言にもかかわらず「おおすみ」は「動静見ながら」接近を続けた。
国が一貫して主張してきた事故の状況は次のようなものだ。
《追い越しはしていない。衝突約1分前まで危険はなかった。約60メートルの間隔で安全に交差できた(「とびうお」右後方の「おおすみ」が左後方に抜ける)。ところが「とびうお」が右に急に舵を切ったため衝突した》(趣旨)
釣り船が直前に右転をして自分から衝突したという。国土交通省運輸安全委員会と海上自衛隊の調査結果も同様だ。しかし「とびうお」右転を裏づける有力な証拠はない。「右転などしていない。理由もない」と生存者らも異を唱えてきた。前述の会話は国が唱える右転説の矛盾をくっきりと浮き彫りにした。