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大阪「フジ住宅」レイハラ訴訟で原告側勝訴
中村一成|2020年7月28日4:14PM
人種・民族差別をめぐる判例は、被害当事者の身を捩る闘いで少しずつ、確実に前進してきた。反ヘイト裁判の嚆矢、京都朝鮮学校襲撃事件(原告勝訴判決が2014年確定)、徳島県教組襲撃事件(同16年確定)、民族差別と女性差別の複合被害を認めたヘイトスピーチ裁判(同18年確定)など。
7月2日、大阪地裁堺支部(中垣内健治裁判長、判決は代読)で新たな判断が示された。東証一部上場の不動産会社・フジ住宅(大阪府岸和田市)を舞台にしたレイシャルハラスメントを巡る民事訴訟だ。同社では今井光郎会長の主導でヘイト本や歴史改竄本のコピー、それに迎合する従業員の感想文などが繰り返し社内配布されたほか、会社ぐるみで自治体教育委員会に育鵬社などの右派教科書採択を求める運動も行なわれた。
耐えかねたパート従業員の女性(50代、在日韓国人3世)が15年8月、今井会長と同社に3300万円の損害賠償を求めて提訴した。彼女は社に留まっての闘いを決断。提訴後には、「恩情を仇で返すバカ者」など、従業員が原告を非難する大量の感想文が配布された(本誌1月24日号参照)。
原告側は「配布文書はヘイトスピーチを含んでいる」「職場で差別的言動に晒されない権利があり、被告は職場環境配慮義務に反している」などと主張していた。
判決で大阪地裁は、被告に連帯して110万円の支払いを命じた。「社会的に許容できる範囲を超えている」などとして違法性を認めたのは「嫌韓嫌中本などヘイト文書の執拗な配布」「教科書採択への動員」「提訴後の原告への非難」の3点である。
文書配布については内容の侮蔑性や攻撃性、多い時は月1000枚に達し、連日配られた時期もあった執拗さに言及。同じ国籍や出自を持つ者に「著しい侮辱」を感じさせ「名誉感情を害するもの」などと認定した。加えて国籍による差別を禁じた「労働基準法」第3条をもとに、「国籍によって差別的取り扱いを受けるおそれがないという労働者の内心の静穏」は、一般的な内心の静穏以上に保護されるべき人格的利益と判断。被告の行為で原告は現実的な危惧感を抱かされているなどとした。
教科書採択運動に関しては「党派的な運動の一環」で業務と無関係と断定。「労働者である原告の政治的な思想・信条の自由を侵害する差別的取り扱いをともなう」と、原告の人格的利益の侵害を認めた。さらに提訴後の原告への非難に対しては、「疎外感」を与え「裁判を受ける権利を抑圧するとともに名誉感情を害するなどの深刻な不利益」を与えたと指弾した。
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