ダヌカさんの入管法裁判急展開
東京地裁、忌避申し立て中に「強行判決」
樫田秀樹|2020年8月4日11:27AM
7月3日。駐日スリランカ大使館も「間違いなく本人である」と証明するスリランカ人男性のダヌカさん(38歳)は、東京地裁で「本人」と認められなかった。
ダヌカさんは出入国在留管理庁が「ダヌカ名義の偽パスポートで入国したチャミンダ氏だ」として2010年以降、入管法違反の罪で刑務所での2年の服役、そして入管収容施設で数次にわたり計3年以上収容されてきた。その収容中の昨年3月1日、入管庁が自分を「偽パスポート」所有者と断定したことや退去強制令書(送還命令)を発布したことの撤回を求める裁判を起こした。つまりダヌカはダヌカだとの認定を求めたのだ。
今年2月25日、ダヌカさんは第5回口頭弁論で「私はダヌカだ」との意見陳述を行なった。だが直後、鎌野真敬裁判長が結審を宣言。ダヌカさん代理人の指宿昭一弁護士は「本人である証拠を収集中。結審は許されない」として「裁判官忌避」を申し立てた。これで結審は延びた……はずだった。
6月27日。ダヌカさんから「急ですが、7月3日に判決が出ます!」との驚きの電話が筆者に入る。当日の法廷は、結審はされていないとして、指宿弁護士は出廷を拒否。ダヌカさんも傍聴席に座った。無人の原告席に向かい、鎌野裁判長はダヌカさんの撤回請求を「却下する」と告げ10秒後に退廷した。
筆者は判決文を読んだが「ずるい」と捉えたのは、裁判所が、スリランカ大使館がダヌカさんを本人と認めている点に触れていないことだ。
ダヌカさんは控訴審で争う姿勢だ。もし敗訴が確定すると、ダヌカ名義のパスポートが使えない、つまり、強制送還すらされず、一生を、収容か就労禁止の仮放免(収容を一時的に解く措置)で生きるしかないからだ。
「人間が人間をここまで苦しめる。日本での暮らしは苦痛です」
ダヌカさんの絶望は深い。
(樫田秀樹・ジャーナリスト、2020年7月17日号)