処方箋が違う政府の新型コロナ対策
鷲尾香一|2020年8月6日5:15PM
しかし、日本の公的債務の対GDP比は先進国では唯一200%を超えている。今回の2度の補正予算で250%超に拡大する。
国債はあくまでも公的債務=借金であり、返済する必要がある。安易な国債の発行は、将来世代にツケを回し、負担を強いることを忘れてはいけない。
20年度当初予算で国債の償還と利払いを行なうための経費である「国債費」は23.4兆円だった。これは予算全体の22.8%にあたる。本来、国民のために使われるべき予算の22.8%が借金の返済に使われているのだ。
その上、2回の補正予算で新型コロナ対策に57.6兆円も投入される国民の税金は、医者(政府)の処方箋(対策の内容)が間違っているから、持続化給付金事業の委託問題のように、正しい効能が発揮できないのだ。
もう忘れているだろうが、11年3月11日に発生した東日本大震災では、復興財源が所得税、住民税、法人税への上乗せで徴収された。法人税は12年4月1日以降の事業年度から2年間の減税を実施した後、2年間、税額の10%が上乗せされた。
住民税は14年度から10年間、1人あたり年1000円が、所得税は13年1月1日から25年間増税され、住民税、所得税ともに現在も増税が続いている。
新型コロナ対策に使われた財政出動も、やがては税金となって国民に跳ね返ってくる。それだけに、本当に効果のある対策に使われなければならない。
(鷲尾香一〔本名・鈴木透〕・元ロイター通信編集委員。2020年6月12日号)