コロナ対策で進む電子マネーが気にくわない
2020年8月12日10:24AM
なかなか明確に「コロナ後」と言える世界に踏み込めない我ら。峠の向こう側にたどり着いたとき、どんな光景がそこにあるのか。このことばかりに思いを巡らす日々だ。その中で、1つのモノと1人のヒトに思いが及んだ。1つのモノはフェイ。1人のヒトはアイザック・アシモフである。
フェイは、ミクロネシアのヤップ島で使われていた石貨だ。石貨と言っても、実際にはおカネとして使用されていたわけではない。冠婚葬祭時の引出物や配り物に当てられていた。大きさもさまざまで、超巨大なものもあった。
そうなると、むろん、持ち運びは不可能だ。そのような巨大フェイについては、贈り物にする際にも、相手の手元に持ち込むことはなかった。所有権が移転するだけだったのである。うっかり海の底に沈めてしまったフェイでも、「あそこにあるアレをあなたに贈る」と言えば事足りるのであった。
なぜ、今フェイに思いが及ぶのか。それは、コロナ対策の一環として電子決済の利用が増えているからだ。確かに、物理的な紙幣・硬貨の手渡しがなくなれば、それだけ感染リスクは低下しそうだ。
そこで、クレジット・カードや電子マネー、ビットコインなどの暗号通貨が決済手段として選択されるケースが増えている。各国の中央銀行も法的通貨の電子化あるいはその研究に踏み出している。
筆者は、どうも電子化された現金が気に食わない。匿名性がまるでなく、追跡可能性が完璧だ。権力に我々の資産状況を完全把握されてしまいそうだ。そんなものを普及させるより、フェイ方式を取った方がいいように思う。「あそこにあるアレ、あなたに差し上げるから、その代わりにこれ頂戴。」
そう言ってフェイでお買い物をする。なんなら、海底にあるフェイの写真を渡してもいい。フェイの根底にあるのは、人と人との信頼関係だ。何やら、温かい気持ちになる。