死神との折り合い
小室等|2020年8月12日12:54PM
死神がいる。七七年間生きてきて、初めて死神を概念じゃなく実感した。そいつは見えない。見えないのに顕かにそこにいる。その死神に招かれてたくさんの人が死んでいく。死んだ人はカウントされ、毎日メディアが人数を報告、それぞれの人生は数字と化す。
ウイルスに言わせれば、ウイルスはもともといて動物や人と共存してきたのだから、お前ごときに死神だの、数字だのと言われる筋合いはないのかもしれないが、それでも今回の新型コロナウイルス禍の僕の実感は、死へ誘う死神。西洋の絵にある大鎌を持ったやつじゃない。そいつは見えない。見えないのに、リアルに感じる。
仕事が全部消えたのだから不要不急もいっさいなし。三月一八日を境にときおり近所のスーパーへ行く以外、家から一歩も出ず。溜め込んだ片づけものが山ほどあるので暇を持て余すことはないが、心身所在の不安定感は否めない。と思っているおり、二カ月と二週間ぶりに電車に乗った。座談会に呼ばれて東京・大井町まで。
顔ぶれは、原田直之(民謡)、伊藤多喜雄(民謡)、松元ヒロ(パントマイム)、立川志の輔(落語)の先輩同輩諸氏。これだけの売れっ子が予定を合わせるのは奇跡の業。でも考えたら売れてる売れてないにかかわらず、みんな平等に仕事がないのだから平等に暇、平等に閉じ籠もり。みなさん外に出る口実を待っていたに違いない。
渡りに船の、雑誌『みんよう春秋』の座談会。みなさん大井町の日本民謡会館に集結という次第。
「このコロナ禍の下、芸人のなすべきこと?」がテーマだったと思う。さすがにこれだけの仕事をしてきた芸人が集まったわけですから至言、名言噴出でありました。