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コロナショック、国民資源の再配分が必要

高橋伸彰|2020年8月13日9:41AM

高橋は、成長減速への適応で最も重要なのは人々の生活様式の改革だと言う。そのために「従来のモデルチェンジ的使い捨ての代わりに、丈夫な物を買い、かつ修繕してこれを長く使う」(『低成長にどう対応するか』)ことが不可欠だというのだ。

これに対し、石油危機後も成長に固執する歴代の自民党政権が推進したのは、原子力発電所の新増設や公益事業の民営化、労働分野の規制緩和や社会保障費の抑制、数合わせの市町村合併など、現に生きている人々の安全や安心よりも、数字に表れる経済効果の大小で是非を決める成長優先策だった。

その轍を踏んで、なお「3本の矢」で実質2%、名目3%の持続的な成長を、また「新3本の矢」で2020年頃には名目 GDP600兆円達成をと、できもしない成長を目標に掲げ、不確実なリスクへの対応を怠ってきたのがアベノミクスである。この顛末こそ、今回のコロナショックで浮き彫りになった医療や介護、福祉、そして教育や文化の危機に他ならない。

下村と高橋が提言した高度成長後への適応策は、半世紀を経ても棚上げされたままである。ポストコロナで、再び石油危機後の轍を踏まないためにも、異端の2人が遺した提言を忘れてはならないのである。

(高橋伸彰・立命館大学名誉教授。2020年7月3日号)

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