近づく「大失業時代」
鷲尾香一|2020年8月14日7:26AM
問題はこれだけではない。4月に前月比で105万人、5月も同27万人も減少した雇用者数は、その内訳を見ると、非正規雇用者が大幅に減少している。前年同月比では、正規雇用者の減少が1万人なのに対して、非正規雇用者は61万人の減少だ。
つまり、簡単に現状をまとめれば、労働力人口が増加したのは失業者が増えたからであり、就業者が前月比4万人増加したのは、雇用者が同27万人も減少したのに、自営業主・家族従業者が同33万人も増加したからであり、雇用者の減少は、そのほとんどが非正規雇用者の減少だということだ。
しかし、それよりも深刻なのは休業者だ。4月に前月比で348万人も増加し597万人となった休業者は、緊急事態宣言の解除を受け、5月は同174万人減の423万人となったが、依然、高止まっている。
労働力調査では、休業者は就業者に含まれ、失業者に含まれないため、失業率には影響しない。
だが、仕事がないための休業は、やがて失業に転じる可能性が高い「失業予備軍」でもある。
もし休業者を失業者とした場合には、5月の失業率は10.2%まで上昇する。それだけ、今の雇用は不安定な状態にあり、「大失業時代」が近づいているのだ。
(鷲尾香一〔本名・鈴木透〕・元ロイター通信編集委員。2020年7月10日号)