若者にはなぜ“経営者マインド”が搭載されているのか
雨宮処凛|2020年8月17日8:36AM
「最近の若いものは」などと言い出したら「雨宮処凛も老けたな」と言われることを承知で書きたい。
この10年ほど、私は下の世代に対して謎に思っていることがある。それは、「なぜ、彼ら彼女らの多くには“経営者マインド”が搭載されているのか」という疑問だ。
たとえば「最低賃金を1500円に」という運動がある。時給が上がれば働く者にはいいことづくめだ。しかし、これに対し、「中小企業が潰れる」「バイトがそれだけの働きをするのか」と口にする若い世代は多い。自らが時給1000円程度でバイトしているのに、である。
彼ら彼女らは決して「労働者目線」では語らない。経営者の視点で物事を見、また統治者の視点で社会を語る。そのようなマインドの背景にあるのは、「常に上を目指していない奴はクズ」というようなメッセージを浴びるように受けてきたことがあるのだろう。
「一生自分が労働者だと思っているような人間はダメ」という刷り込みは、いつか成功して経営者になるのだから、時給1000円でバイトしているのは「仮の姿」なのだ、という言い分を若者たちに与える。だから、非正規労働者やフリーターの運動は、なかなか「主流」にはならない。なぜなら、多くが「自分は非正規なんてすぐにやめる」と思っているからだ。