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1000億円超の「クールジャパンマネー」にも電通
佐々木実|2020年8月17日9:11AM
『日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー』(光文社新書)には驚くべき事実が綴られている。独自調査に基づくレポートだが、著者のヒロ・マスダ氏はジャーナリストではなく、映画の脚本やプロデュースなどに携わる映画人だ。10年という調査の長さに著者の憤りが表れている。
「クールジャパン」のかけ声のもと、経済産業省は映画やアニメ、ゲームなどいわゆるコンテンツ産業の海外展開を成長戦略と位置づけ、巨額の予算を計上して支援してきた。クールジャパン政策に投入された公的資金は累計で1000億円以上にのぼるという。
〈しかし、これらの「クールジャパンマネー」は1円たりとも、日本のクリエイティブを支える「人」に向けられることはありませんでした〉と著者は断言する。
たとえば、2011年に設立された「All Nippon Entertainment Works(オールニッポン・エン
タテインメント・ワークス:以下「ANEW」)。経産省が所管する産業革新機構が100%出資する、いわば官製映画会社だ。「日本の物語をハリウッド映画化する」との事業目的を掲げ、合計22億2000万円が投資された。
ところが、ANEWは毎年のように赤字をたれ流しつづけた末、一本の映画も製作することなく、2017年、民間投資会社にわずか3400万円で身売りされた。
ANEW設立のころから、経産省は官民ファンドや基金などを設けて、数百億円規模の支援枠組みを立て続けに打ち出した。「クールジャパン支援ツール」と呼ばれた制度だが、助成金が製作現場にいる人々に届くことはなかったと著者は批判している。
巨額の「クールジャパンマネー」はどこへ消えたのか?