ビラまき高校生を「私人逮捕」
警察・裁判所の異常対応とは
岩本太郎|2020年8月18日7:42AM
公道でビラまきをした高校生が中学校の副校長に私人逮捕され、警察に勾留されたばかりか自宅を家宅捜索される事件が東京都内の住宅街を舞台に発生した。
逮捕されたのは東京都内の単位制高校に在籍する男性Iさん(20歳)。関係者によると7月8日の朝8時頃、都内目黒区洗足にある目黒区立第九中学校(片柳博文校長)から数百メートルの路上でビラをまいていたIさんに、同校副校長の男性(50代)が現場まで訪れて注意。その場面をスマホで撮ろうとしたIさんに「スマホで殴られた」として私人逮捕し、通報を受けてやってきた警官7人に身柄を引き渡したという(最終的な逮捕容疑は公務執行妨害)。
Iさんがまいていたのは、同中学校からの進学者が多い都立小山台高校の「ブラック指導」の事例(寒い日に水泳の授業を生徒に強制するなど)を告発したビラだ。Iさんは児童・生徒の権利保障を学校に訴える活動などを行なう高校生らの自主組織「日本自治委員会」の一員として当日活動中だったが、同会は政治運動や思想活動を目的とした組織ではなく、ビラの中身も前記の通り。にもかかわらず学校外の路上での、憲法が権利を保障するビラ配布を、こともあろうに教職員が逮捕したというのだから異常な話だ。
しかも6日後の同14日には都内のIさん宅に警視庁が家宅捜索を行ないビラ類26点を押収。17日に東京地裁で開かれたIさんの勾留理由開示公判も、何と凶悪犯罪や過激派関連事件の裁判で使われることで知られる通称「警備法廷」こと429号法廷で行なわれた。被疑者弁護士からの求釈明に佐藤薫裁判長は「お答えしません」を連呼。抗議した傍聴人が数十人の警備員により廷外に連れ出される一幕もあった。
なお、逮捕後に目黒区の碑文谷署に勾留されていたIさんは7月28日に処分保留で釈放された。
(岩本太郎・編集部、2020年7月31日号)