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乳腺外科医事件に逆転有罪判決 
東京都保険医協会が抗議声明

片岡伸行|2020年9月7日2:10PM

逆転有罪の控訴審判決を出した東京高裁・地裁の入る裁判所。(撮影/片岡伸行)

「常識から大きく乖離した冤罪判決である」――。東京都保険医協会(須田昭夫代表理事、約5800人)は7月17日、東京高裁(朝山芳史裁判長)が同月13日に出した乳腺外科医準強制わいせつ裁判の控訴審判決に対し「非科学的で反医学的」であり「医師団体としても一般市民としても絶対に許容できない」と強く抗議する声明を出した。同協会は事件発生当初から「術後のせん妄状態による幻覚」の可能性があるとして、同医師の裁判を支援してきた。

2016年5月に東京・足立区の柳原病院で、手術後に4人部屋のベッドで寝ていた女性患者の胸を舐めたなどとして準強制わいせつ罪に問われた男性医師は当初から犯行を否認。一審判決(19年2月、東京地裁・大川隆男裁判長)は「術後せん妄」を認めたほか、警視庁科学捜査研究所(科捜研)が逮捕・起訴の決め手となったDNA型鑑定の証拠物を保存せず廃棄してしまったことを非難し「犯罪の証明がない」と無罪とした。

しかし、高裁・朝山裁判長(判決前の5月2日に定年退職)は被害女性が「仮にせん妄に陥っていたとしても、せん妄に伴う幻覚は生じていなかった」と断じ、唾液のアミラーゼ鑑定、DNA型鑑定を「科学的な厳密さの点で議論の余地がある」としながらも、被害女性の証言の「信用性を補強する」とし、一審無罪判決を破棄し懲役2年の実刑判決を出した。

同協会は声明の中で、科捜研の証拠物廃棄に疑問を呈しながらその鑑定結果を認めるような控訴審判決を「非科学的誤謬」とし、せん妄の専門医が認めた「性的幻覚の出現」を根拠なく否定し、専門医ではない言わば“検察お抱え医師”の証言を認めている点を「反医学的判断」と指摘。「医療界を愚弄し、日本の刑事司法への絶望感を増長するもの」と批判した。

なお、被告・弁護団は即日上告した。

(片岡伸行・記者、2020年8月21日号)

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