もはや疑えない福島での「がん多発」
明石昇二郎|2020年9月10日5:07PM
福島県では6年連続で胃がんが「有意な多発」
そこで、本誌昨年6月7日号掲載の拙稿(東京電力福島第一原発事故と「全国がん登録」 福島県、「最短潜伏期間」過ぎた胃がんで「有意な多発」)に引き続き、16年と17年のデータをもとに、「全国胃がん年齢階級別罹患率」と福島県の同罹患率を比較してみることにした。
男女ともにさまざまな年齢層で、全国平均を上回っている年齢階級が散見される。
次に、全国と同じ割合で福島県でも胃がんが発生していると仮定して、実際の罹患数と比較してみる検証を行なった。疫学の手法で「標準化罹患率比」(略称SIR、standardized incidence ratioを計算する方法だ。全国平均を100として、それより高ければ全国平均以上、低ければ全国平均以下を意味する。
福島県の胃がんについて、08年から17年までのSIRを計算してみた結果は、次のとおり。
【胃がん】福島県罹患数 SIR
08年男 1279 88・3
09年男 1366 94・1
10年男 1500 101・1
11年男 1391 92・2
12年男 1672 110・6
13年男 1659 110・9
14年男 1711 119・3
15年男 1654 116・6
16年男 1758 116・3
17年男 1737 120・0
08年女 602 86・6
09年女 640 94・2
10年女 700 100・9
11年女 736 100・9
12年女 774 109・2
13年女 767 109・9
14年女 729 109・0
15年女 769 120・3
16年女 957 139・4
17年女 778 119・6
国立がん研究センターでは、SIRが110を超えると「がん発症率が高い県」と捉えている。福島県における胃がんのSIRは11年以降、男女とも全国平均を上回る高い値で推移しており、特に16年の女性では139・4というひときわ高い値を記録している。