子宮頸がんワクチン被害者ら厚労相に意見書
「接種勧奨」の動き警戒
岡田幹治|2020年9月18日3:48PM
薬害の根絶と被害者の迅速な救済を求めて毎年開かれている「薬害根絶デー」は21回目の今年、新型コロナウイルスの影響で、「薬害根絶 誓いの碑」前の集いとオンラインによる集会の2本立てで進められた。
8月24日13時、厚生労働省の敷地内に建てられた「誓いの碑」前に薬害の被害者や支援者十数人が集まった。まず全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)の花井十伍・代表世話人が「要望書」を、次にHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)被害者の伊藤維さん(24歳)が「リーフレット改訂案に対する意見書」を加藤勝信厚労相に手渡した。加藤厚労相は薬害根絶に向けて努力すると述べた。
伊藤さんは中学3年生だった2010年7月から翌年4月にかけて、HPVワクチンの予防接種を3回受けた。1回目の直後、注射をした左腕が腫れあがり、激しい痛みとしびれを覚えるなどしたが、「3回打たなければ効果がない」という医師の言葉に従って3回接種を受けた後、両足が頻繁に痛むようになり、13年8月に国立精神・神経医療研究センター病院で佐々木征行医師から「子宮頸がんワクチンの副反応(副作用)の典型的な症状」との診断を受けた。
多くの被害者は全身に及ぶ疼痛、不随意運動、知覚障害、運動障害、睡眠障害、記憶・学習障害など重篤な副反応症状に苦しむ。 伊藤さんは身体のあらゆるところが痛むので、海外留学はあきらめて国内の音楽大学に進み、ベッドで休み休みバイオリンの練習を続け、卒業した。現在はよくなったり悪くなったりを繰り返す状態。突然痛み出し、トイレにも1人で行けなくなるため、バイオリニストとしての活動が思うようにはできない。この日も母、亜希子さん(仮名)が付き添っていた。
一番不安なのは親が亡くなった後のことだ。被害者が1人でも生活できるような支援制度をぜひつくってほしいと考えている。
被害者たちが16年3月、政府と製薬企業2社(MSDとグラクソ・スミスクライン)を相手取って損害賠償請求訴訟を東京・大阪など4地裁に起こした時、伊藤さんも原告になった。この訴訟は法的責任を明確にし、被害の回復だけでなく、治療法の開発や被害者が望む医療体制の整備も実現することを目指している。昨年7月の3次提訴を加えて原告は132人となり、裁判が続いている。