花王の柔軟剤PRに多治見市関わる
「香害」被害者ら問題提起
深谷桂子|2020年9月25日3:02PM
夏の厳しい暑さで知られる岐阜県多治見市の「暑さ対策」事業が物議を醸している。化粧品・薬品大手の花王(東京都中央区)と連携し、同市職員102人を対象に花王の柔軟剤新製品「ハミング涼感テクノロジー」の試供品調査を今年5月25日から6月8日まで実施。その調査結果が「効果もあるように感じました」「涼しくなった」などの職員の回答も含めた形で花王の公式サイトに掲載されたのだ。また、前記の試供品は同市の環境課窓口や市内の中学校で配布された模様だ。
私企業の宣伝に自治体が関わることはもちろん、その対象商品が柔軟剤である点も問題だ。香料製品による健康被害は「香害」と呼ばれて社会問題化しているが、その原因のトップとされるのが柔軟剤だからだ。国民生活センターも柔軟剤については2013年以来二度目の「情報提供」を今年4月に行ない、注意喚起をしている。
今回の件では、まずネット上で「香害」被害者を中心に批判が上がり、多治見市役所に数十人が直接意見を寄せたという。8月12日には「香害をなくす連絡会」(事務局・日本消費者連盟)も同市の古川雅典市長あてに「私企業の柔軟仕上げ剤を推奨することに関する質問書」を提出した。だが8月20日付の同市の回答は「香料が強めと承知」「今回、国民生活センターの情報を確認」とある一方「香害についての報道は承知していない」「協力したが、商品は推奨しているわけでない」などのお寒い内容に終始。同市のこうした問題意識のなさに対し同連絡会は、これまでの経緯や試供品を使った生徒の健康状態などを問う再質問書を9月1日付で送付した。
官民連携のウインウイン事業と思ったのだろうが、花王の思惑にはまり柔軟剤の広告塔に仕立て上げられた脇の甘さは批判されるべきだ。多治見市には今後、自治体として矜持ある対応を期待する。
(深谷桂子・日本消費者連盟会員、2020年9月11日号)