国会閉会後の「不都合な真実」公表
高橋伸彰|2020年10月2日5:06PM
7月30日、内閣府は第2次安倍晋三政権の誕生と同時に始まった景気回復が、2018年10月に「山」に達し、その後は後退局面にあると認定した。拡大期間は71カ月止まりで、戦後最長の73カ月を記録した「いざなみ景気」には及ばなかった。
政権内には記録更新への期待もあったが、景気動向指数の推移を見れば、今回認定された「山」の前にも14年3月に一度ピークを打ち、その後2年近く悪化を続けていた。政府の月例経済報告は18年11月以降も「緩やかに回復している」との判断を維持したが、「99%の私たち」にとっては、実感なき回復だったと言える。
国会閉会後の「不都合な真実」の公表は、追及逃れにも見えるが、政権延命を最優先に置く官邸の深慮遠謀には、別のシナリオも見え隠れする。新規感染者数が再び急増し安倍政権のコロナ対策に批判が高まる中で、窮地を脱する最強の戦略は衆議院の解散・総選挙に他ならない。国民に信を問うためには「大義」が必要だが、その布石が今回の景気後退の認定に潜んでいるのではないか。
安倍首相は、昨年10月の消費税率引き上げ直後の所信表明演説で「安倍内閣は経済最優先です。消費税率引上げによる影響には、引き続き十分に目配りし(中略)経済の好循環を確保してまいります」と述べたが、その時点での景気は回復局面にあるというのが政府の判断だった。
それが7月30日に開催された景気動向指数研究会で修正されたうえに、同日の経済財政諮問会議では今年度の経済見通しも、当初のプラス1.4%からマイナス4.5%へと下方修正された。リーマン・ショックが起きた08年度のマイナス3.4%を超える戦後最悪の減速である。