国会閉会後の「不都合な真実」公表
高橋伸彰|2020年10月2日5:06PM
14年12月の解散・総選挙の際には、予想外の景気悪化に対する消費税率引き上げ時期の延期を「大義」に掲げたが、今回のコロナ危機では消費税増税を織り込み、すでに2次にわたる補正予算を策定し、不測の事態に備えて10兆円の予備費も計上している。今さら消費税減税を「大義」にして国民に信を問えば、「空前絶後の規模、世界最大」と銘打った対策が看板倒れになってしまう。
しかし、消費税率を10%に引き上げる1年前から、景気は後退していたとなれば事情は一変する。解散カードを握る安倍首相の前に、増税判断の誤りを正す消費税減税が「大義」となって現れるからだ。
冷静にみれば、こじつけのようだが、いわゆる「モリカケ」問題の追及から逃れるため、国会冒頭で異例の解散を強行した17年10月のときも、「大義」は消費税増税の使途変更だった。消費税は、安倍首相にとって国民に信を問う「大義」の十八番なのである。
実際、「青木の法則」にしたがえば、危機ライン(内閣と自民党の支持率合計が50%を割る)まではなお余裕がある。レイムダックと化す前に解散・総選挙を断行すれば、政権の求心力回復も夢ではない。
そう考えると、官邸の戦略が透けて見えてくる。そこには、コロナ禍で苦しむ人々に対する思いなど微塵もない。それでも解散がまかり通るなら、小異にこだわり合流や共闘に手間取る野党の存在が、あまりに軽すぎるからである。
(高橋伸彰・立命館大学名誉教授。2020年8月7日号)