アフターコロナ、「密室」の政策決定は通用しない
佐藤甲一|2020年10月2日4:11PM
総裁選挙の争点を明確化することで、安倍首相から岸田文雄政調会長への禅譲路線が既定化することを避けたい思惑もあるだろう。その思惑はさておいても、コロナ禍のもとで、今の政権における側近政治を生み出した政治構造のいびつさも露呈した。コロナに打ち勝つとはこうした自民党の政治体制の歪みも是正することに他ならない。自民党総裁選挙はそれでこそ、国民注視の選挙となる。
であるならば、岸田氏も明確な政治姿勢と政治構造の変革プランを示さなければならない。政調会長でありながら、安倍首相の側近政治に埋没し、コロナ対策で何一つ見るべき党の提言を示せないようでは総裁選挙に出る資格すらないのではないか。岸田氏こそ禅譲などという甘い幻想を捨て、むしろ「安倍政治」の終わりを宣言し、党総裁選挙の年内前倒し実施を提案すべきではないか。
その上で勝者が争点とした新しい自民党政治の方向性を示し、21年度予算を編成すべきである。その成果をもって、これに対抗すべき野党との間で21年秋に日本の進むべき未来像を争点に衆議院選挙を行なうのが筋ではないか。
「永田町政治」に長けた政治家や識者にそれこそ「画餅」と笑われそうだが、そうした政治のプロが仕立て上げたコロナ禍のもとでの政府の施策が次々と世論の圧力で撤回、変更に追い込まれていることを忘れてはならない。
今や「密室」の政策決定は通用しない、それが「アフターコロナ」の政治である。もう一つ、東京オリンピックだが、来年開催するか否かは、政治の思惑と切り離し、出場を予定している当事者の「オリンピアン」に問うがいい。この状態でオリンピックに相応しい競技が1年後に繰り広げられるかどうか。答えは当のアスリートが一番理解しているのではないか。
(佐藤甲一・ジャーナリスト。2020年8月7日号)