新聞労連委員長に女性就任
次期委員長は吉永磨美さん
宮本有紀|2020年10月7日10:02PM
日本新聞労働組合連合(新聞労連)次期中央執行委員長候補に毎日新聞記者の吉永磨美さんが承認された。9月23日付で就任する。女性の委員長としては2人目だ。
今年が目標年だった「202030」(2003年に内閣府・男女共同参画推進本部が決定した「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的位置に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」のこと)は、社会全体でもメディア界でも達成されていない。新聞労連の「役員会」にあたる中央執行委員も長年ほぼ全員が男性でジェンダーバランスの悪さが指摘されていたが、19年1月の臨時大会で、中央執行委員会に最大10人の女性枠を設ける規約改正を実施。委員を公募し、意思決定に関わる女性の割合を3割以上に引き上げた。
日頃からジェンダー課題に取り組み、公募の推薦委員も務めた吉永さんは「18年に100人以上の組合員から、女性の役職比率をあげる積極的是正処置を早急に実行することを求められており、南彰委員長がリーダーシップをとって推進した。地方連合会委員長や専門部長などの役職に女性が増え始め、制度の変更が全体のジェンダーバランス改善の底上げにつながっている」と成果を話す。一方で「労組が変革しても各職場は依然として変わらない。昨年、労連が組合員約2万人を対象に実施した働き方・将来性に関するアンケートでは、女性の6割が〈性差別がある〉と回答した。18年、19年に日本文化マスコミ文化情報労組会議(MIC)がメディア関係者に実施したセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)についてのアンケートでは〈相談できずに泣き寝入り〉〈相談して二次被害にあった〉などの回答が多かったことからしても、安心して被害を訴えられる状況にはない」と課題を挙げる。
18年の財務事務次官による記者へのセクハラ行為や、今年5月に報じられた黒川弘務検事長(当時)と記者たちの「賭けマージャン」も、飲食の席やマージャンなど密室で公権力と「絆」をつくって情報をやりとりするという取材手法の問題が根底にある。この男性中心主義で癒着を生みやすい手法が、メディアも社会も歪ませていることが指摘されている(本誌7月10日号の林香里氏メディア欄参照)。
吉永さんは「戦後の新聞業界は第二次世界大戦時の無批判な大本営発表の垂れ流しや公権力の検閲を許してきたことの反省から始まった。権力と距離を取り、各々の組織や記者が自立した視点で思考しジャーナリズム活動を行なえるようにしなければならない」とし、「南委員長が進めてきた改革を後戻りさせないようさまざまな活動を展開していきたい」と抱負を語った。
(宮本有紀・編集部、2020年9月18日号)