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ベルリン国際映画祭が男優賞、女優賞を廃止
ジェンダーニュートラルな賞を導入

田口理穂|2020年10月7日10:21PM

ベルリン国際映画祭は8月24日、来年の映画祭では「女優賞」「男優賞」など男女を区別する賞をやめ、ジェンダーニュートラル(性的中立)な賞を導入すると発表した。世界的な映画祭としては初の試みだ。

ドイツ語では、ほぼすべての職業(教師、医師、保育士、機械工、社長など)に男女の区別があるが、それをなくしていこうという動きが背景にある。性的少数者への配慮から、書類の表記で男女のほかに「その他」の項目が見られるようにもなった。そのため映画祭で主演男優賞や主演女優賞を廃止し、「主演俳優賞」など性別のない表現を導入することに注目が集まってはいるが、評価は賛否両論。なぜかというと映像関連の職業訓練校の生徒は男女ほぼ同数だが、映画界で活躍している人は圧倒的に男性が多いからだ。

ドイツの映画館に貼られている映画ポスター。(撮影/田口理穂)

俳優では男性の出演は女性の2倍で、外見や性的魅力に重きを置いた役が多い女性と比べ、演技に重点を置いた重要な役は男性が多いとの調査もある。

女性の監督も増加傾向にはあるが、2020年2月の同映画祭の出展作品では男性監督67%、女性は33%だった。そのため男女区別をなくすと、絶対数の多い男性の受賞が増えるのではないかと危惧する声がある。

男女平等の推進に異論はなく、ジェンダーニュートラルを前面に打ち出したことは評価できる。だが地元の『ベルリン新聞』は「これは本当の改革とは別物だ。(企業が管理職の女性割合を定めるように)出展作品のうち女性監督による作品の割合を決めることのほうが明確な意思表示となる」とコメントし、映画界のジェンダー平等に寄与するには賞の名称変更以外の方法があるのではと疑問を呈した。

この決定が次回の映画祭でどのように実現されるのか見守りたい。

(田口理穂・在独ジャーナリスト、2020年9月18日号)

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