コロナ対策名目で裁判所が傍聴席を大幅制限
28団体が改善の要請書提出
小石勝朗|2020年10月16日3:47PM
新型コロナウイルスの感染拡大防止の名目で裁判所が使用可能な傍聴席を大幅に減らしているのは、憲法が定める裁判公開の原則を侵害するとして、反原発訴訟の原告団など28団体が9月24日、東京高裁と東京地裁へ改善を求める要請書を提出した。
福島原発事故当時の東京電力幹部を訴えている東電株主代表訴訟の木村結・事務局長によると、同訴訟の口頭弁論には東京地裁で一番大きい103号法廷が使われ、傍聴席は98ある。しかし9月10日の口頭弁論では36席だけが使用可能とされ、うち9席を司法記者クラブ所属の記者が占めた。
原告席も弁護団を含めて10人に制限されたため、原告41人のうちあふれた人は傍聴席に座ることになり、一般傍聴席は10に。原告5人が一般の傍聴希望者に席を譲ったが、それでも先着15人しか法廷に入れなかった。
要請書は、観客が大声を出さない前提で演劇などの収容率が100%認められたことを例示。記者会見で木村さんは「コロナ対策は大事だが、開廷中の私語は禁止されておりマスク着用などで対応できる。傍聴席を減らすなら別室で法廷内の映像を視聴できるようにするなど、代替措置で傍聴の権利を守ってほしい」と訴えた。
同訴訟弁護団の海渡雄一弁護士も同席し、「各地の裁判所でも傍聴席はほぼ3分の1に減らされており、最高裁の指示ではないか」と指摘。同訴訟では近く、注目度が高い勝俣恒久・東電元会長ら被告の尋問が行なわれる予定で「メディアがさらに席を占めれば一般傍聴席はゼロになりかねない。緊張感をもって審理するには公開原則が重要だ」と強調した。関係団体に賛同の呼びかけを続け、最高裁への要請も検討するという。
東京高裁と東京地裁は今後の対応について、取材に「感染拡大や収束の状況など社会情勢の推移を見ながら判断する」と答えた。
(小石勝朗・ジャーナリスト、2020年10月2日号)