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「黒い雨」裁判で原爆と原発のヒバクシャ共闘 
控訴撤回申し入れ

本田雅和|2020年10月23日7:27PM

厚労省健康局の幹部らに抗議声明を読み上げる熊本美弥子さんら。(撮影/本田雅和)

75年前、米軍による広島への原爆投下直後に放射性物質とともに広範囲に降り注いだ「黒い雨」に遭遇した84人が、被爆者健康手帳の交付を受けられないのは違法だと、広島県・広島市と訴訟参加した国を訴えていた「黒い雨」裁判――。広島地裁は7月末、原告全員への手帳交付を命じる原告全面勝訴の判決を言い渡したが、被告側の国、県、市は8月に控訴したことで、「放射線被害の特質をふまえて救済を優先する――という被爆者援護法の精神を踏みにじるものだ」などの批判を浴びていた。

そんな中、「これは原爆被爆者だけの問題ではない」と、2011年3月の東京電力福島第一原発事故の被災者らが動いた。

広島の被爆者と交流しながら福島地裁で係争中の「子ども脱被ばく裁判」を支える水戸喜世子さん(85歳)=大阪府高槻市=が、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん=福島県田村市)に「連帯行動」を提起。ひだんれんが全国の避難者団体や脱原発訴訟原告団などに呼びかけ、9月29日には被爆者らとともに共同で抗議声明を発表、厚生労働省に控訴取り下げを迫った。福島原発事故後、原発と原爆の被害者同士による初の「共闘」となったのだ。

背景には、広島地裁判決が明示した画期的な論点があった。これまでの司法判断の場では避けられてきた「内部被曝の危険性」の指摘だ。原爆被爆者も原発被災者も、その被曝線量は、爆心地や爆発地からの距離や空間線量などによる外部被曝中心の推測・評価で線引きされ、分断されてきた。

が、高島義行裁判長は、呼吸や飲食を通した体内取り込み線源による内部被曝の特性に着目。「体内組織に放射性微粒子が付着すると、飛程が短いα線やβ線でもホットスポットと呼ばれる集中被曝が生じることで外部被曝より危険が大きい」と指摘したほか、放射線照射を受けた細胞だけでなく隣の細胞も損傷するとのバイスタンダー効果や、低線量長期被曝による身体リスクの高さを示したペトカウ効果など最新の知見を引用し、原告全員の病歴・病状をカルテや個々の体験証言から調べ上げ、国の指定する原爆症の症状との共通性があれば、積極的に救済対象としたのだ。

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