トランプ米大統領、コロナ感染逆手にとった巧妙な選挙戦術とは
先川信一郎|2020年10月23日7:34PM
米国のトランプ大統領(74歳)が10月2日未明、「今夜、メラニアと私は(新型コロナウイルス感染症)検査で陽性と判定された。隔離と回復のプロセスをただちに開始する。私たちは、ともに乗り越える!」とツイートした。前日には、最側近のヒックス大統領顧問の陽性が判明していた。
米主要メディアは、この衝撃的なニュースであふれかえった。米国内では約742万人がコロナに感染し、死者は約21万人と世界最多だ。それでもトランプ氏は大規模集会を開き、最初のテレビ討論会(9月29日)で「マスクは必要な時につければいい」と言い放つなど、コロナ対策を軽視してきた。皮肉にも、それがブーメランのように自分に返ってきたわけだ。本選挙(11月3日)の行方は、大統領の容体次第となった。
「CNNテレビ」は10月2日、「米政府が直面した最も危機的な時だ。政治が激動する季節に、米国は新たな混乱に陥った」と速報した。3日には、医療関係者の話として「軍医療センターに入院したトランプ氏の症状は思ったより深刻」との見方を示した。
メドウズ大統領首席補佐官は当初、「大統領に軽い症状はでているが元気だ。迅速に回復すると楽観している」と強調したが、翌日には「非常に懸念される状況だった。回復に向けた明確な過程にはまだ入っていない」と述べ、容体が一時悪化していたことを認めた。
米大統領は国家元首であり、行政府の長、軍の最高司令官である。戦争遂行権限や法案への拒否権など、絶大な権力を持つ。CNNは「これは『コード・レッド(緊急事態発生)』だ。軍の最高司令官が隔離され、その職務を果たせない。現時点で政府は非常に脆弱だ」と危機感をあらわにした。
ホワイトハウスでは明らかにクラスターが発生していた。最高裁判事指名発表会(9月26日)には約200人が出席し、これまでに大統領とメラニア夫人、コンウェイ前大統領顧問、共和党のマイク・リー、トム・ティリス両上院議員、取材記者ら8人の感染がわかっている。