トランプ米大統領、コロナ感染逆手にとった巧妙な選挙戦術とは
先川信一郎|2020年10月23日7:34PM
【世界経済への影響も懸念】
「CBSテレビ」は10月2日、トランプ氏が抗ウイルス薬レムデシビルによる治療を受けていると詳報。「入院は米国の安全を脅かすだけでなく、世界経済に大きな影響を及ぼす」と解説した。そのうえで大統領が職務を遂行できない場合、権限を継承するペンス副大統領(61歳)と、その次の継承者となるペロシ下院議長(80歳)は陰性だったと報じた。
一方、『ワシントン・ポスト』同3日付は「大統領の入院で、選挙戦はより不透明になった。トランプ氏は2日に倦怠感を訴え、夫人は頭痛とせきの症状があった」と明らかにした。同日付『ニューヨーク・タイムズ』は、大統領夫妻を含む陽性の11人と、ペンス副大統領や民主党候補のバイデン前副大統領(77歳)ら陰性の8人の顔写真を掲載。遊説先で接触した疑いのある人たちに警戒を促した。
まさに「オクトーバー・サプライズ」だったが、実はそれ以前にサプライズは二つあった。一つは「RBG」の愛称で親しまれ、映画にもなったリベラル派のギンズバーグ最高裁判事の死去と、それに続く保守派の最高裁判事の指名。
二つ目は、テレビ討論会でトランプ氏が、白人至上主義の過激派団体「プラウド・ボーイズ」に「下がって待機せよ」と言及し、ヘイトをあおったことだ。この団体は「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」など、人種差別への抗議活動に反対してきた。
トランプ氏は3日夜、軍医療センターからの投稿動画で「ずいぶん良くなった」「近いうちに戻る」と表明。4日夕には突然、車で外出してみせた。その後も「法と秩序。投票だ!」「株価上昇。投票だ!」と分刻みでツイート。5日夜(日本時間6日朝)に退院し、ホワイトハウスに戻ったが、本当はまだ重症? いや軽症? まさかフェイク? と情報が錯綜中だ。ともあれ大統領の容体は、連日のトップニュースだ。感染を逆手にとった巧妙な選挙戦術ではある。
(先川信一郎・ジャーナリスト、2020年10月9日号)