揺れるリニア建設問題
静岡県民らが差し止め訴訟へ
樫田秀樹|2020年11月2日1:46PM
10月1日と2日、筆者は市民団体「リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク」(以下、ネットワーク)が主催した南アルプスの調査に同行した。
JR東海が2027年開通を目指す「リニア中央新幹線」(以下、リニア)。完成すれば東京(品川駅)―名古屋間の286キロメートルを最高時速500キロ、約40分で結ぶ。リニアは静岡県最北部の南アルプスを11キロだけ地下で横断するが、その工事により大きく懸念されていることが二つある。
一つは、JR東海の予測によれば工事後も県民の水源である大井川が毎秒2トンも減流すること。これは大井川を水源とする中下流域の8市2町62万人分の水利権量に匹敵する。
もう一つが、工事で排出される360万立方メートル(東京ドーム3杯分)もの残土を大井川上流の燕沢という河川敷に、高さ65メートル、幅300メートル、長さ700メートルというビル街に匹敵する規模で積むことだ。
だが、燕沢は昨年秋の台風19号の豪雨と土砂崩れに襲われた。その現場の被害状況を確認するための調査同行だった。
結論から言うと、土砂崩れに襲われた燕沢では大井川の流路が変わり、川沿いに生育していた木々はすべて消失していた。
「もし、ここで残土が崩落したらこのあたりはダム湖になる。それは水源の危機を意味します」
こう語るネットワーク共同代表の林克さんは「10月下旬頃、県民有志で『リニア工事差し止め』を求めて提訴する」と語った。