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揺れるリニア建設問題 
静岡県民らが差し止め訴訟へ

樫田秀樹|2020年11月2日1:46PM

【「訴訟の会」が原告、サポーターを募集中】

リニア計画ではすでに二つの訴訟が起こされている。

一つが、16年に国土交通省を相手取った「事業認可取消し」訴訟。原告は738人。

もう一つが、19年にJR東海を相手取った「リニア工事差し止め」訴訟。原告は山梨県南アルプス市の住民8人で、リニアの地上走行ルートの至近距離に住む人々だ。高さ20~35メートルの高架が作る日陰で家屋は暗くなり、田畑はつぶされ、終日、リニア走行音に悩まされることになる。にもかかわらず移転補償をしないJR東海の姿勢に工事差し止めで臨んだのだ。

そして三つ目が林さんたちだ。

静岡県はリニア計画において唯一、建設工事が始まっていない県だ。川勝平太県知事がその着工を許可しないからだ。

JR東海が環境アセスをした報告書でもある「環境影響評価準備書」を縦覧したのは13年9月。そこで明らかにされた「大井川の流量が最大毎秒2トン減少」との報告に静岡県下の自治体は驚いた。翌14年、静岡県は「工事で失われる水を全量大井川水系に戻す」ことなどを話し合うための「中央新幹線環境保全連絡会議」(以下、連絡会議)を立ち上げ、ここで県・JR東海・有識者などが協議を続けるが、JR東海が「全量を戻す」と約束したのは連絡会議発足から4年半も経った18年10月。連絡会議の委員たちは「やっと本格的な議論ができる」と捉えたが、1年後の19年8月にJR東海は「全量戻すことは難しい」と翻意。県とJR東海は膠着状態に陥る。川勝知事は「静岡県のせいで27年開通が遅れる」との批判を浴びても「水を守る」との強い決意で着工を認めるつもりはない。

林さんたち県民有志は、この状況に「県の闘いを指をくわえて見守るのではなく、県民も立ち上がらねば」と昨年秋から訴訟を検討し、今年に入ってから「静岡県リニア工事差止訴訟の会」(以下、訴訟の会)を結成。林さんは共同代表に就任した。

訴訟の会は7月と8月、前記8市2町に属する島田市と掛川市で集会を開催したが、いずれも予想の倍以上の市民が集まり、その結果、現在までに「水を守りたい」と集まった原告は約40人。訴訟の会では、原告に加え、裁判を資金面で支えるサポーター(初年度3000円)も募集中だ(「訴訟の会」問い合わせ先=事務局[芳賀]。FAX 054・283・8882。Mail ahnhaga@gmail.com)。

(樫田秀樹・ジャーナリスト、2020年10月16日号)

 

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