厚労省が介護保険関連の省令改正へ
「要介護者の保険外し」か
吉田啓志|2020年11月2日1:58PM
【負担あってサービスなし(?)】
9月16日、野党議員の求めで開かれた厚労省の省令改正の説明会。介護団体や介護事業者らを前に、同省の担当者は「給付制限ではない」と釈明し、「総合事業に要介護者も参加できるようになれば(総合事業などを対象とした補助金の)地域支援事業交付金の対象にしやすくなる」と説明した。
だが、新型コロナ禍では休止する事業所が続出した。介護保険の場合は事業所が閉じても国が代替支援を確保する一方、総合事業は自治体任せ。介護業界は人手不足に喘いでおり、新たなサービス提供者を確保できる自治体は限られる。人との接触を伴う介護サービスを全面的に住民やボランティアに頼るのも難しい。出席者は「総合事業では支援が保障されない」「介護保険のサービスを望む要介護者であっても、事業者を確保できない自治体は総合事業で代用しかねない」などと問い詰めた。
17年度の厚労省調査によると、要介護1の人で介護保険の通所サービスを利用する人は36・1%。要介護2の人は30・6%だ。総合事業側にこの人たちの十分な受け皿はない。そもそも総合事業の住民主体のサービスには、最も需要のある家事サービスが含まれていないことが多い。
要介護1~2の人は、ただでさえ生活援助を中心にサービスを切り刻まれてきた。「負担あってサービスなし」。介護保険制度発足時に指摘された懸念が、着々と現実になってきている。
(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、2020年10月16日号)