ブロイラー鶏の飼育実態をウェブ公開
人の健康、環境にも大きな影響
岡田千尋|2020年11月2日5:28PM
精肉コーナーに毎日大量に並ぶ鶏肉はどのように作られるのか。私たちは、日本の肉用鶏の97%を占めるブロイラー鶏の飼育実態を、元従業員のレポートを元にサイト「50DAYS」(URL https://50days.jp/)で明らかにした。
孵化直後、先天性異常があったり体が小さい雛などは殺され、残りの雛は農場に輸送後、鶏舎の地面に放り投げられる。彼らは親友を作り、寄り添ったり仲間を守るような行動も見せるが、養鶏場ではそれらの行動は無視される。
雛は本来、孵化から120?150日かけて大人の大きさになるが、品種改変により40日で大きくなる。欧米ではこの時点で屠畜するが、ぶよぶよした肉を好む日本ではさらに1キログラム太らせて3キログラムになる50日で殺す。骨格形成が成長に追いつかず、40%が歩行困難に、3%が立てなくなり、餌や水に届かなくなって餓死する雛もいる。まだ赤ちゃんなのに1~4%が心不全で死ぬ。
しかも日本での飼育密度はEU規制の1・7倍、ブラジルの平均密度の1・8倍だ。飼育密度が高まれば歩行困難の割合も増え、地面は糞でドロドロ。感染症や皮膚炎が悪化する。彼らは不快さと痛みと苦しみの中で50日を過ごす。
鶏肉は抗生物質を効かなくする菌=薬剤耐性菌の問題と関わりが深い。外国産より国産鶏肉のほうが薬剤耐性菌保有率が高いことが厚生労働省の調査でわかっている。動物へのひどい扱いは人の脅威になるのだ。
解決策はある。ベターチキンという福祉に配慮した飼育に変えること、そして鶏肉を大豆ミートに変えることだ。動物だけでなく、人の健康や環境問題の解決にもつながる。畜産物の大量生産・大量消費から離れる時がきている。
肉用鶏は国内で年間約7億羽が殺されるが、その鶏全てが強烈な個性をもつ尊い存在であることを忘れないでほしい。
(岡田千尋・アニマルライツセンター代表、2020年10月16日号)