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東京メトロ売店員への退職金不支給めぐり逆転判決 
最高裁、非正規への格差容認

青龍美和子|2020年11月5日11:27AM

最高裁前で「私たちはあきらめない!」と声を上げる原告ら。右端は青龍美和子弁護士。(撮影/松原明)

東京メトロの駅構内にある売店で働いていた契約社員4人が、売店を運営するメトロコマース(東京メトロの子会社。東京都台東区)を相手に起こした裁判の最高裁判決が10月13日にあった。同じ売店業務に従事する正社員と比較して基本給や住宅手当、残業手当、賞与、褒賞および退職金に設けられた相違について旧労働契約法20条(2020年4月1日から大企業については削除)に照らし不合理であるとして、民法709条(不法行為)に基づき各賃金の差額相当損害金を賠償請求したものだ。

原審の東京高裁判決(19年2月20日)は、住宅手当と褒賞の相違(不支給)、残業手当の相違(割増率の相違)は不合理であると判断していた。また、退職金については正社員の退職金規程に基づく計算方法(基本給×勤続年数に応じた支給月数)で計算した金額の4分の1すら支給しないことは不合理だと判断していた。

原告と被告の双方が上告し、最高裁は退職金についてのみ上告を受理した。そのため審理の争点はもっぱら「退職金を契約社員に支給しないことが不合理かどうか」となっていたところ、最高裁は「不合理ではない」と結論づけた。その理由の一つが、この会社の退職金制度が「正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的」で設けられたとしている点だ。

しかしメトロコマースでは、正社員は勤続1年でも退職金が支給される仕組みになっている。確かに勤続年数を重ねるほど退職金は増えるが、契約社員も10年前後の長期間勤務を継続しており、正社員の平均勤続年数よりも長い。最高裁はそうした実態をほとんど無視し、使用者側が繰り返し主張してきた「有為な人材の確保・定着」という目的を採用した。こうした主観的で抽象的な目的が重視されることは非常に問題である。

また、もともと正社員が担っていた売店業務が非正規に置き換えられてきたことから、最高裁は、売店業務に従事する正社員が少数で特殊な存在であることを強調。会社側の組織再編の経過から、こうした特殊な正社員の賃金水準を(非正規並みに)変更する等には困難な事情があったと判断した。だが、これも完全に使用者側の事情であり、それをくみ入れれば、どんな格差があっても「不合理ではない」と許されることになってしまう。

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