教員が長時間労働の末、重度障害
公務災害認めた判決確定
藤川伸治|2020年11月5日11:36AM
熊本県天草市内の小学校男性教員(当時44歳)が2011年12月に脳幹部出血で倒れ、全身麻痺で寝たきりになったのは公務災害と認めた今年9月25日の福岡高裁判決について、被告の地方公務員災害補償基金が10月7日に上告見送りを決め、高裁判決が確定した。
前記小学校は学力向上の「研究推進校」に指定されており、男性は倒れる前年の10年4月から校内研修などで中心的な役割を担う研究主任を務めた。また、土日の部活動指導や県独自の学力テストの採点などに追われ、業務量が増えた男性は学校で終わらない仕事を自宅に持ち帰るようになった。
発症後の12年3月、男性は公務災害の認定を請求したが、発症前の1カ月間の残業が約64時間半とされ、認定基準の100時間に達しないため、17年2月には公務外と判断された。男性は同年7月、この取り消しを求めて熊本地裁に提訴したが、同地裁は今年1月、パソコンの起動時間などから校内で約50時間、自宅で約40時間の計約90時間の残業と認定。前記基準に達しないとして訴えを退けた(本誌今年3月27日号参照)。
しかし男性が控訴した福岡高裁は一審判決を覆して男性の訴えを認めた。同高裁は発症前1カ月間の時間外労働を93時間としたうえで、男性が恒常的な時間外労働により睡眠時間が減っていたこと、倒れる1カ月前には土日の部活動で試合にも引率し、早朝から勤務に従事せざるを得なかったことなどが疲労回復を遅らせたとして、公務の過重性を認めた。被告側は男性が深夜や早朝の自宅作業の必要はないのにやっていたと主張したが、同高裁は男性が職場で処理しきれない業務の処理を余儀なくされていたとして、これを退けた。
期限が決まった中で多種の業務をやらざるを得ない教員の勤務実態も踏まえ、業務の過重性を認めたという意味でも、今回の福岡高裁判決は大きな意義がある。
(藤川伸治・NPO「共育の杜」理事長、2020年10月23日号)