核兵器禁止条約が来年1月発効
「最大の障害は日本」と被爆者ら懸念
本田雅和|2020年11月13日7:21PM
【「核抑止力など存在しない」】
今後条約が発効すると1年以内に第1回締約国会議が開かれるが、条約を実効化すべくICANやピースボートは「核兵器の非人道性を人間の生の声で伝えていくために、世界190カ国で被爆証言集会を、コロナ禍が収束するまではオンラインで開催していく」という。
長崎の被爆者で日本被団協事務局長の木戸季市さん(80歳)は、発効決定を喜ぶとともに、75年前のできごとがまざまざと脳裏に蘇ったことを吐露した。
「あの日、私は爆心から2キロの地点で直撃を受けた。翌日、爆心地を横切って疎開したのだが、そのとき、街は真っ黒で、道には死体がごろごろ、川も死体で埋まり、水を求める人たちが……理屈ではない。死んでいった人たちの死を犬死ににしてはならない」
「核抑止力など存在しない」という木戸さんは「本当は核脅し力だ」と断罪する。「この75年間、核は戦争を抑止することなどできていない。世界各地で戦争はずっと続いてきているではないか。核戦争を止めているのは広島、長崎の事実であり、ヒバクシャと連帯する世界の人々が阻止してきたのだ」と説いた。「批准も署名もしない日本は恥ずかしい」と話す。
核禁条約の実効化を悲願としてきた川崎さんに、筆者は「一番の障害は何だと考えるか」を問うた。
「やはり、一番の壁は『日本』です。世界(国際社会や国際世論)はうまくいっている。条約はできたし、ICANのすばらしい仲間、ネットワークも広がっている。核兵器廃絶は確実に前に進んでいるのに、一番の障害は日本が動かないことだ。政府も国会議員も、なんとなく核抑止力がしょうがないと認めている人たちも、まじめに考えていないのだと思う。(日米安保も含めて)安全保障でございます、核抑止力でございます、と言われると『ああそうですね』となってしまう無関心と思考停止。冷戦時代のままだ」と語った。
(本田雅和・編集部、2020年10月30日号)