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芥川賞作家・大城立裕氏が逝去
沖縄「知の巨人」の生涯
米倉外昭|2020年11月19日5:14PM
大城立裕氏が10月27日に亡くなった。知の巨星が、大きな光跡を残して夜空に消えていった。9月19日に95歳の誕生日を迎えていた。90歳を過ぎてからも旺盛に作品を発表し続け、今年2月にもシンポジウムに登壇して発言し、5月には最後の著書を出版した。死因は老衰という。まさに命の尽きるまで現役を貫いた一生だった。
1967年『カクテル・パーティー』で芥川賞を受賞以後、87年、『世替りや 世替りや』の舞台が紀伊國屋演劇賞特別賞、93年、沖縄戦を描いた長編『日の果てから』で平林たい子賞を受賞。2002年、全集『大城立裕全集』(全13巻)を勉誠出版から刊行した。晩年の15年には、初めての私小説という『レールの向こう』で川端康成文学賞を受賞している。
10年6月、新首相になった菅直人氏が大城氏の『小説 琉球処分』を読んでいることを明かし話題となった。名護市辺野古への新基地建設に回帰した鳩山由紀夫首相の辞任の後だけに注目された。
小説だけでなく戯曲、エッセー、評論も数多く発表し、文学にとどまらず沖縄の文化全体の牽引役を果たしてきた。『世替りや 世替りや』はウチナーグチ(沖縄語)で演じられる沖縄芝居である。琉球王国時代に創始された歌舞劇「組踊」の新作を多数創作し、上演されるなど、沖縄の伝統芸能の世界でも大きな存在だった。
全国的には知名度は必ずしも高くない。しかし、沖縄にとっては知の巨人、文化の巨人だった。死去を報じた沖縄地元の『琉球新報』『沖縄タイムス』とも28日1面トップ横見出しで報じ、特集紙面を組んだ。元知事で17年に亡くなった同年生まれの大田昌秀氏に匹敵する扱いだ。社会面見出しでもその業績を称えた。〈文学で沖縄照らす/「差別」作品に昇華/歴史根差し未来示す/文化力で県民に自信〉(『琉球新報』)、〈沖縄と日本問う/文学の地平開く/「文化的独立」を訴え〉(『沖縄タイムス』)