聖路加病院「チャプレン」から性的被害
元患者女性が民事訴訟提起
西村仁美|2020年11月26日6:52PM
【病院側は現時点で回答を拒否】
ところでAさんは1回目のSARC東京への連絡時、また18年当時に通院していた同病院のハラスメント相談対応窓口に相当する立場の看護師への相談時にも被害の訴えを頭ごなしに否定されたという。しかも病院への相談後には本人が望まないにもかかわらず他の病院への転院を余儀なくされ、治療機関から排除された形になっている。最初の性被害にこうした2次被害が加わり、後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)まで患ったとしている。
Aさんは今回の提訴に至るまで「一言では言えないような壮絶なセクシャルハラスメントを受け、それをなんとか乗り越えてきた」と語り「病院内で体験したことに関して、この裁判の中で明るみに出し、尊厳の回復を求めていく」と会見の席で毅然として述べた。
これに対して聖路加国際大学は訴状が届いていないことを理由に取材を拒否。また、S氏が教師として在籍する日本基督教団の道家紀一総務幹事は「彼は、私たちの関係施設で働いていない『無任所教師』です。どういうところで働いているかをつかみ切れていない中で、事実関係はわかりませんが、キリスト教の牧師がこうした報道をされること自体に、被害を訴える方や社会一般に対して申し訳なく思っております」と回答。一方、S氏を「支えて守る会」の代表で、本人が在籍した「横浜聖霊キリスト教会」の深谷美枝牧師は「今でも無罪を信じるが、会は昨年4月に彼が教会を辞めたことで自然消滅となった」と話した。
今後の裁判に注目するとともに、性的被害を訴えることで傷つけられない社会を望む。
(西村仁美・ルポライター、2020年11月13日号)