国は原発新設「想定せず」も山口県は上関原発にGO?
山秋真|2020年11月27日4:49PM
中国電力は11月4日、上関原発新設計画の予定地沖へ船を派遣した。原発用地として埋め立てる計画の海域で来年1月28日まで、海底を約60メートルまで掘り地質を調べるという。中電は昨年も実施しようとして中断。再開に向けて今年10月、海面を占用する許可を再申請して山口県の許可を得た。
だが、そこを漁場とする予定地対岸の祝島の漁師は同意していない。1982年の計画浮上から一貫して同原発に反対しているのだ。これまで中電は原発建設に必要な立地環境調査や漁業補償契約を、予定地周辺8漁協(当時)からなる共同漁業権管理委員会の同意をもって強行。「迷惑料」と漁業補償金を支払ったが、祝島分(それぞれ約2200万円と約10億8000万円)の受理は拒まれた。
それでも山口県は2008年、建設のための埋立免許を中電に交付。中電は09年から工事を進めようとして難航。同年末に原子炉設置許可を申請したが、審査中に追加の地質調査が陸海で必要となった。11年には東電の福島第一原発事故を受け、審査も工事も中断。埋立免許は失効の見通しとなった。知事が公有水面埋立法に基づき交付時に指定した竣工期限を「延長しない」と表明したからだ。
だが12年、中電は失効前日に延長を申請。県は、知事と政権の交代を経た16年に許可した。中電は19年、再延長を申請し許可を取得。今回の海域ボーリング(掘削)調査のための6カ月も免許の再延長期間に加算された。一方で、同調査は埋め立てと関係ないとの中電の弁が報じられている。
この11月4日、菅義偉首相は、原発の新設を想定していないと衆議院予算委員会で答弁。だが同日から祝島の漁船約10隻は調査を警戒しつつ操業している。「中電の船は連日のように来て、作業せず帰る。ゴーサイン待ちのパフォーマンスなのか」と祝島女性。11月15日・26日のオンラインイベントで現状を伝えるという。詳しくは「祝島島民の会青年部」で検索を。
(山秋真・ライター、2020年11月13日号)