「核のごみ」処分場めぐる住民投票案否決
北海道寿都町
横田一|2020年11月30日5:03PM
【菅首相にも通じる独善体質】
臨時町議会を傍聴していた元高知県東洋町長の澤山保太郎さんは「出直し選挙で私に敗れた前町長が、強引に最終処分場選定プロセスに応募した時と瓜二つ」と振り返りつつ、次のように語った。
「11日に寿都町に出した公開質問状でも指摘しましたが、地方自治法第138条の2には『地方公共団体の執行機関は、議会の議決と法令などに基づいて事務を執行する義務がある』と定められています。しかし今回の文献調査の応募には、町議会議決も根拠となる法令もない。片岡町長の法律違反は明らかで住民訴訟をすれば勝つ可能性は高い。国会や道議会で追及されても不思議ではない」
13日の審議でも住民投票条例賛成の沢村国昭町議が「町議会で文献調査の審議がなされていない」と追及。あたかも町議会がお墨付きを与えたかのように説明した町長が訂正する場面もあった。文献調査反対派でもある沢村氏は「13日の臨時議会が初審議の場」と強調しながら解説してくれた。
「(町長が文献調査について話をしたと主張する)『(町議)全員協議会』は協議する場で議決をする場所ではない。議決をするなら臨時議会や定例会に諮らないといけない」
堂々と法律違反で文献調査応募に踏み切った町長の姿勢は、日本学術会議法や過去の国会答弁を無視して6人の会員候補を任命拒否した菅義偉首相と重なり合う。
沢村氏は最終処分場選定の法律について「民意が反映されない欠陥法だ」と問題視もしていた。
「町長は『文献調査は最終処分場建設に直結しない』と言っているが、法律には『市町村長や知事の意見を国は聞くことにはなっているが、(調査を)止められる』とは書いていない。文献調査から概要調査、精密調査へと進んでいく。辺野古新基地建設と同じように、文献調査に応募したら、国はどんなことをしても最終処分場建設をやってくると思う」(沢村氏)
本来なら北海道の民意を代弁する鈴木直道知事が片岡町長に核のごみ持込拒否の道条例遵守を指示し、同じ法政大学出身で知事選でも支援を受けた菅首相にも「民意を反映させる法改正が必要」と申し入れをしていないとおかしい。だが首相との太いパイプを活かした形跡は見えない。ミニ菅首相のような独裁的町長と道知事に対して今後、最終処分場で影響を受ける寿都町民を含む道民がどう対抗していくかが注目される。
(横田一・ジャーナリスト、2020年11月20日号)