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リニア問題で静岡県民ら107人が工事差し止め訴訟を提起

樫田秀樹|2020年12月1日11:30AM

10月30日、静岡地裁に入る住民訴訟の原告団。「オール静岡」体制が固まりつつある。(撮影/樫田秀樹)

10月30日、静岡県民が中心となった107人の原告がJR東海を相手取り「リニア工事差止」を求める訴訟を静岡地裁に起こした。

これまで、リニア中央新幹線工事に関する裁判は、2016年5月に738人の原告が国土交通省に対してリニア計画の「事業認可取消」を求めた行政訴訟、19年5月に山梨県南アルプス市の住民8人が、JR東海を相手取り「リニア工事差止」を求めた民事訴訟があるが(いずれも係争中)、今回で三つ目の裁判となる。

静岡県でのリニア計画の問題は簡単に説明すれば、県北部の南アルプスでのトンネル工事で地下水脈が断ち切られ、大井川の流量が毎秒2トン減る可能性があることだ。これは大井川を水源とする中下流域の8市2町62万人分の水利権量にほぼ匹敵する。

これが13年9月に公になると、川勝平太知事は「失われる水を全量大井川水系に戻す」ことを訴え、14年4月、県に「中央新幹線環境保全連絡会議」(以下、連絡会議)を設置。以来、県、JR東海、有識者、水利権者などが協議を続けるが、現時点でもJR東海から納得できるだけの全量戻しの方法は出されていない。

この長引く会議に、JR東海も国交省も川勝知事に「着工を認めてほしい」と要請するが、川勝知事は「水を守ることが優先」として頑として着工を認めない。

そして今回の裁判は、市民団体「リニア新幹線を考える県民ネットワーク」などが「問題を県だけに任せるのではなく、県民こそが立ち上がろう」と、県内各地で学習会を行なうなど1年間をかけて準備して実現したものだ。

これにより、行政と県民の双方がJR東海と対峙するという構図が静岡県で確立した。

13年以降、この問題で取材者泣かせだったのは、一部の市民団体を除いては、肝心の地元住民、特に実際に大井川の水を利用する農業者や工業者が声を上げていないことだった。だが、裁判が精神的支援の側面を持つことから、やっと地元住民が声を上げ始めた。

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